発熱時にあわてて医療機関を受診される方を多く見かけます。その多くは高熱が出ると頭がおかしくなるのではないかとの思い込みがあるようです。確かに脳に障害が出る可能性がある病気(脳炎・脳症・髄膜炎など)は高熱が出ますが、高熱が出たからこうした病気になるわけではありません。脳に障害を起こす可能性のある病気の場合は、発熱以外に急にぐったりしたり、異常な行動をしたり、顔色が悪くなるなどの症状を必ず伴いますので、熱が高くてもそれほどの不機嫌ではなく、水分摂取がほぼ普段通りにできていれば、緊急で病院を受診する必要はありません。
特に今年の秋から来年の春にかけては、新型インフルエンザが間違いなく流行します。インフルエンザではないのに夜間救急にあわてて受診し、数時間待っている間にインフルエンザをもらってくる可能性もあるわけです。しかも発熱初期にはインフルエンザのチェックをしてもきちんとした結果が出ず(インフルエンザは発熱から半日ほどしないと信頼性のある結果は出ません)、解熱剤を処方されるだけです。沖縄ではすでに夜間救急が5時間待ちだそうです。私も8月22日に夜救診の当番でしたが、患者さんは2時間くらいは待っているようでした。秋から冬にかけてはもっと込み合います。仮にインフルエンザだったとしても、ぐったりせず水分が摂れていれば、リスクの高い人以外は家で静かにしているのが一番良いのです。そこで、発熱時には以下の対応をするように心がけてください。
- 水分摂取が普段より少なくなければ、半日から1日位は家で静かに過ごし、栄養補給に努めましょう。家族への感染防止のため、マスクをし、家族みんなで手洗いとうがいをするようにします。
- 熱が高いときには首の左右や脇の下、鼠径部(股のつけ根)を冷やします。よくおでこに冷却シートを貼っている人を見かけますが、気持ちが多少良くなるだけで、解熱効果はありません。特に乳幼児は寝ているときに鼻をふさいでしまい窒息することがありますので、注意が必要です。また水分はできれば普段よりも少し多めに摂ったほうが望ましいです。
- 1日位しても高い熱が続いていたり、だるさや関節痛があるような場合は、医療機関を受診しましょう。
- 医療機関を受診する際は、必ず電話その他で予約してからマスクをつけて受診して下さい。当院では発熱時間とそうでない人の時間を分けています。わからない場合は受付にお問い合わせ下さい。
- リスクが高い人とは、糖尿病や腎臓病・心臓病などの持病がある人、妊婦、喘息や慢性肺疾患の人、免疫不全の人、ステロイド治療をしている人などです。こうした人たちは様子が変だと感じたら早めに医療機関を受診して下さい。(入院が必要になることもありますので、明らかに具合が悪いときには入院のできる病院に直接行ったほうが良いと思われます。)
- リスクが高い人は特に、人ごみに出るときにはマスクで予防するようにしましょう。
- 乳幼児に多いと言われているインフルエンザ脳症は、タミフルで発症を抑えられるとは考えられていません。したがってタミフルを早くから飲んでいれば脳症にならないわけではありません。親の観察が重要ですので、発熱初期には2日位はお子さんから目を離さないようにして、急にぐったりしたり様子が変な場合は、すぐに医療機関を受診するようにして下さい。
- 新型インフルエンザは肺炎になることが多いようです。急に激しい咳が出て呼吸が苦しいときにはすぐに医療機関を受診しましょう。
- ワクチンは重症化の予防に有効ですが、新型ワクチンについては現在のところ入手の情報はありません。季節性のワクチンは新型には効きません。季節性のワクチンは10月5日から接種開始いたします。非発熱時間内の接種となります。必ず日時指定で予約して下さい。予約のない方は接種できませんのでご注意ください。